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2023.07.06

カーシェアに合わせて保険を設計。安心・安全をパワーアップ!

株式会社DeNA SOMPO Mobility

個人間カーシェアサービスのエニカは、2015年9月にスタートしました。この新しいモビリティサービスをより一層、安心・安全に提供しようと、株式会社ディー・エヌ・エーとSOMPOホールディングス株式会社は2019年3月にジョイントベンチャー企業「株式会社DeNA SOMPO Mobility」を立ち上げ、SOMPOグループで国内損保事業を担う損保ジャパンとエニカ専用保険を開発しました。

MaaS/モビリティ業界は、サービスの特性などから、保険会社も注目している業界かと思われます。また今後、MaaS/モビリティ業界における収益面での成功モデルを確立させたいのは保険業界各社の課題でもあるのではないでしょうか。そんな中、「株式会社DeNA SOMPO Mobility」は、まさにこれからMaaS/モビリティ業界に参入したいと思っている保険業界各社のビジネスモデルになっていると言えます。

このビジネスモデルができあがったきっかけとは?どのような経緯や背景があったのか?これから同様なビジネスを検討している保険業界各社にとって、その判断・検討材料となるお話を伺ってきました。

【お話を伺った方】

株式会社DeNA SOMPO Mobility
プロダクト本部 本部長  渡邊 直樹 様(左)
プロダクト本部 副本部長 太田 直樹 様(右)

専用保険の開発で安心・安全の提供を加速

――DeNA SOMPO Mobilityを設立された経緯をお聞かせください。

太田様 既存のカーシェアでは、自社でクルマを保有しながら、利益を確保していく必要があるため、出店場所を厳選する必要があります。一方で、エニカならクルマを使わない間にシェアしたいオーナーと、必要な時に好みのクルマを使いたいドライバーがいらっしゃれば成立するプラットフォームサービスですので、日本のどこでも、クルマを所有している人にも、所有していない人にも、自由なカーライフを提供することができる唯一無二のサービスです。所有と利用という二元論ではなく、所有と利用をグラデーションさせていくと両方のユーザーとのタッチポイントがあります。そこに魅力を感じてジョイントベンチャーを立ち上げました。

自動車保険のマーケットが縮小していく中で、これからはエニカのようなサービスに溶け込ませて自動車保険を販売する方法も有効と考えています。

――貴社の取り組みには、「個人間カーシェア専用保険」や「0円マイカー」といったものがあるかと思いますが、サービス検討当初、個人間の保険についてはどのようなスキームで、オーナー様やユーザー様に提供されていたのでしょうか?

太田様 エニカは2015年9月からサービスを提供しています。利用に当たっては「カーシェアプロテクト(1日自動車保険)」の加入が必須なのですが、2021年7月まで提供していた1日自動車保険には3つの負がありました。

1つ目は、運転中しか補償されないこと。2つ目は、免責金額10万円という設定。3つ目が、シェアするクルマの車種に関わらず車両補償が一律だったことです。

エニカのユーザーにより一層の安心をお届けするためにも、既存の自動車保険ではなくエニカにマッチした自動車保険を開発して提供する必要性を感じていました。損保ジャパンとエニカ専用の自動車保険を共同開発することで、この3つの負を解消することができました。

ユーザー視点の表現と導線で保険をわかりやすく

――専用アプリ内でカーシェアの申し込みから各種保険の手続きまで完結できるようになっています。アプリ開発においてはどのような点に留意したのでしょうか。

渡邊様 ユーザーの皆様に保険の仕組みをいかにわかりやすく伝えるかに留意しました。エニカ専用の保険をリリースしてからは、駐車中も含めてカーシェア中は補償するといった、旧来の自動車保険との違いや、プランごとの違いをどのように伝えるか、ということを考えました。わかりやすく伝えるということが一番の課題でした。

――その課題を、どのように解決していったのでしょうか。

渡邊様 保険のプロフェッショナルである太田さんと、デザイナーさんと私とで、何度も何度も話し合いました。太田さんはもっと説明しないとだめだというけれど、説明が多くなると本当に大切なことが伝わらない、その為にもユーザーの方々が知りたいことをもっと簡潔にわかりやすくしたい、といったやりとりを繰り返しながら、適切な表現をデザイナーさんと作り上げていきました。

太田様 カーシェアプロテクトを私たちの保険として見せることで、ユーザー側にとってわかりやすい言葉で伝えるよう工夫しました。保険の詳細ページに飛ぶと漢字がたくさん並び、一般の方からするとなかなか理解が難しい点も多いのが事実です。そこをいかに簡潔に伝えるかに留意しました。

また、保険販売において譲れないポイントは押さえつつ、ユーザー視点の表現や導線を意識して、サービスに溶け込ませています。これは損保ジャパンだけではできなかったと思っていますし、サービサーであるエニカだからこそ実現できたと思っています。

――保険以外の安心を醸成するための取り組みとして、カスタマーサポート窓口を用意していらっしゃいます。この運営体制についてお聞かせください。

太田様 弊社では、事故や故障の一次受付を担う電話窓口と、エニカ全般の問い合わせをメールで受け付けるカスタマーサポートを用意しています。前者は24時間365日稼働しております。主な業務内容は、事故報告、ロードサービスの手配、オーナー様への連絡、事故後の対応指南です。後者は365日無休で運用しており、利用登録の手続きに関することや、シェアに関することが主な問い合わせ内容です。


事故後もシェアを楽しんでもらえるようにフォロー

――MaaS事業と保険業界の連携の重要性や利点など、保険業界各社がMaaS事業に参入する際のポイントについてお聞かせいただけますでしょうか。

太田様 MaaS事業において自動車保険は、冒頭でお話しした二元論の所有に対して保険をかけるというところから視点を変えられるかが重要だと思っています。自動車保険を提供するというよりは、サービスに合わせて保険をグラデーションさせていく方が、これからの保険会社のあるべき姿に変わっていけるのではないでしょうか。例えば、自動車のEV化が迫っているのであれば、EVに最適な保険は何か。自動運転ができるようになるのであれば、自動運転に最適な保険は何か。リアルな課題に対して保険を提供していくことが大切だと思います。

また、自動車保険はお金での補償がメインですが、最近の生保では現物給付(例えば、ケガで入院してしまったら入院費を支払うというのではなく、自宅入院ならヘルパーさんを派遣するなど、提供の仕方をお金ではなく支援という形にする)という形に変化が見られます 。このように、補償のあり方を変えていくことがMaaS事業においても重要ではないかと考えています。 

――最後に、エニカや関連サービスの今後の展望や、さらなるチャレンジについてお聞かせいただけますでしょうか。

渡邊様 僕らのビジョンは、クルマの所有と利用の垣根をなくして新しいつながりをつくることです。ドライバーは近所のクルマにいつでもアクセスでき、移動が楽になる。所有者は、自分のクルマを気に入ってくれた人が何度もクルマを使ってくれることで所有に必要な費用が軽減でき、所有が楽になる。こうした所有と利用の好循環を作るためのプラットフォームがエニカです。

保険とアフターフォローを強化することで、ドライバー様の「人のクルマを運転するのが怖い」、オーナー様の「マイカーをシェアするのが怖い」という不安を解消し、あらゆる人が自由にカーライフを楽しめる環境づくりに努めてきました。 保険においては、金銭的な負の要素は改善できました。しかし、事故や故障のフォローにおいてはまだまだできることがあるので、これからも安心と満足の改善を重ねていきます。

太田様 真の意味での安心・安全は、お金の補償だけではないと思っています。事故解決までをアフターフォローとするならば、事故解決後もシェアを楽しんでいただける、また楽しみたいと思っていただけるようにフォローすることが、真の意味での安心・安全だと考えています。保険の先に目を向けて挑戦し続けることで、新しいカーライフの提供が実現するのではないでしょうか。

渡邊様 エニカのコアバリューは、なかなか乗れないクルマに乗れることですが、2023年4月から「クルマが変われば、思い出が変わる」というコンセプトを掲げ、移動を楽しむというバリューを強く打ち出しています。移動だけなら利便性や近さという要因で他社のカーシェアが選ばれることもあるでしょう。けれど、乗るクルマによって移動体験が変われば、思い出自体が変わります。

例えば、今日はMINIに乗った、キャンプにJeepで行ったなど、移動そのもので体験や思い出を変えることができると思います。電車でもいいのですが、目的に応じてクルマ を使いわける ことはエニカにしか提供できない価値です。SNSでの投稿写真をはじめ、さまざまな情報発信を通じてエニカの世界感が伝わり、より多くの方々に興味を持っていただけることを期待しています。

――「エニカ」を通して、クルマを所有することのあり方そのものや、それに関する保険の考え方など、両視点での思いを伺うことができました。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

エニカの体験記事

高級車にEV自動車…”憧れの車”に乗れるカーシェアサービス「エニカ」に注目!

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続きは、<こちら>。